デファクトスタンダードとなる製品づくりを夢見て
ー最初に携わられたお仕事はどのようなものだったのでしょうか?
組み込み開発のセールスです。新規開拓ですね。組み込み開発というのは、たとえば携帯電話や音響機器などの製品に入っているファームウェアなどのシステム開発ですが、メーカーの開発部門にテレアポをとったり、アポなしで飛び込んだりを、1年ほど経験しました。その営業部隊には先輩もいませんでしたので、営業について教わることもできず、失敗を繰り返していました。でもそのうちに、テレアポなら会社の代表電話ではなく工場にかけると担当部署を教えてくれたり、担当者につないでくれたりとガードが緩いことが分かり、そこからは工場名鑑を見て電話をかけていました。
ーこれまで携わってきた業務で記憶に残っていることをお聞かせください
次に、新規事業としてICカードを活用したソリューションビジネスの立ち上げに、営業として携わりました。ICカードでオフィスなどへの入退室の認証などを行うものです。入社して2、3年目の2001年頃です。これがSmartSESAMEの立ち上げにつながるのですが、記憶に残っていることと言えば、このSmartSESAMEの立ち上げに営業の立場でかかわったことです。
入社以来、ずっとシェアNo.1のデファクトスタンダードとなる製品をつくりたかった。事業の大きな部分を受託開発が占めるシーイーシーでも、そういう製品を生み出したいと、当時から皆で話していて、それを目指して自社開発されたのがSmartSESAMEです。いまでは、セキュアプリントの分野では80〜90%くらいのシェアですから、開発当時の目標は達成したと言えるでしょう。
ーSmartSESAMEをデファクトスタンダードにするために、どのような活動をされたのでしょうか?
新しい市場を切り拓く製品でしたので販売先がなかったことですね。お客様がいませんので、どうやって売ろうかというところからのスタートでした。当時はマーケティングやブランディングの経験もありませんし、自社製品を売ったこともない中で、飛び込み営業などをしていましたが、やはり効率は悪かったですね。
ただ、Webのリスティング広告やSEO対策に取り組むようになってから、徐々に問い合わせをいただくようになり、それでリスティング広告から販売いただいたパートナーさんがもう 1 回売ってくれるなど、少しずつ盛り上がっていきました。
成果が出始めたことにより、Web広告にもう少し費用をかけられるようになり、パートナーさんも増えてきて売れるようになってきました。
シェアNo.1への3つのブレイクスルー
ーいまの成功につながるブレイクスルーとなるようなことはあったのでしょうか?
ひとつはいまお話ししたSEOやリスティングなどのWebマーケティングですね。これで売上は3億円の少し手前くらいまでに達しました。
もうひとつは、マーケットリサーチ会社に依頼した市場シェア調査でNo.1との結果が出たので、シェアNo.1と謳ったことです。SmartSESAMEの発売後、しばらくして3社から競合製品が出てきたときに、お客様から比較検証の要望があり、一時期はそれに時間・労力をとられていて、なかなか決裁がもらえませんでした。そんなときに携帯電話の買い替えでショップに行くと、多種多様な携帯電話が店頭にズラリと並んでいて、なかなか選べない中で、「人気No.1」とPOPが付いていると、それに背中を押されることに気づいたんです。これは販促手法としては常識的なことですけれども(笑)。
それで、市場調査を依頼し、シェアNo.1という結果が得られたので、それから名刺にNo.1と刷り込んだり、カタログに入れたり、『SmartSESAMEが選ばれる理由』というプロモーション動画をつくったりしてアピールしていくと、それまでは決め手がなくて、「検証、検証」と言っていたお客様も「これを入れておけば間違いないよね」と採用してくれるようになりました。
ー現在では自治体でもたくさん導入されていますね
それは3つめのブレイクスルーによるものです。『自治体の情報セキュリティ強靭化対策』という政策を受けて、ターゲットを自治体にフォーカスしたことです。職員のICカード認証を導入し、パソコンのログインやセキュアなプリントを実現するなどのソリューションへの問い合わせが、たくさん寄せられました。
また、各地方にはその地元に有力企業が存在していて、そこが自治体のシステムを押さえていることが分かったので、そこにアプローチし売り込んでいったことも功を奏して、売上を伸ばすことができました。また、メディアからの取材もあり、雑誌などに記事を載せてもらったことでも営業はしやすくなりました。
このようにどんどん売上が伸びると、もちろん達成感もあり気分は良かったですが、一方で月曜だけみんなに会い、火曜から金曜まで地方出張で帰ってこない状態が続いたり、発注が集中して膨大な事務処理に追われたりで、喜びに浸っている暇はありませんでした。
サービスプラットフォームのリーディングカンパニーに!
ーセキュリティサービス事業部について、簡単にご説明ください
「夢をかたちに!」を当事業部のパーパスにしています。続けて「情熱とテクノロジーで、ワクワク・ドキドキするビジネスに、お客様・パートナーとともに、チャレンジしていきます」と、チャレンジしようと、ずっと言っています。まずは「業界のリーディングソリューションをつくる」という目標に対して、いま国内シェアNo.1ですが、世界に出ていきたいという想いがあります。次に事業ドメインとしてはセキュリティを主力として、デジタルドキュメントプラットフォームを新規ビジネスとして立ち上げていく。セキュアプリントに集まったデータをAI活用により、自分が欲しいドキュメントデータを生成し付加価値を高めるサービスを、クラウドビジネスの中核として成長させていきたいと考えています。
ー業界No.1を生み出す、次世代戦略製品の開発、BtoC、海外展開へ向けての課題とその解決方法についてお聞かせください
海外展開については、もちろん経験がありませんから、デジタルドキュメントプラットフォームを海外へ売り込んでいくために、複合機メーカーの海外販社で実績を上げた方などから話を聞いたり、相談したりしています。市場調査も欧米、中国、インドで実施して、どこから攻略していくかを検討しているところです。BtoCビジネスを含めてまだまだこれからですから、まずは調査を行い、実績や知見のある社外の方の力を借りながら進めています。また、開発のほうでも、たとえばAIでは大学など外部の研究者に来ていただいて、その提案を開発にとり入れるなどしています。
これらの取り組みから、世界に唯一無二のサービスを生み出し、サービスプラットフォームのリーディングカンパニーになることを目指しています。
ワクワク・ドキドキを楽しみながら、夢をかたちにしていこう
ービジネスで大切にしていることや、従業員のみなさんにメッセージがあればお願いします
新しいビジネスに取り組むときは、積極的にチャレンジしていかなければ、なかなか現状を変えられないものですが、そのとき、ワクワク・ドキドキを仕事の中に見いだすことがチャレンジをブースト、推し進めるんだと思います。仕事は面白くないと、面白がらないと、ただしんどいだけで身に付くものもつかなくなってしまいます。
みなさん、毎日業務に追われて大変でしょうが、そんな中でも夢をかたちにするための一歩だと思えたら、前向きに取り組むことができ、工夫も生まれてくるのではないでしょうか。ぜひ、一緒にワクワク・ドキドキしながら、失敗を恐れず、チャレンジして夢をかたちにしていきましょう。
山口事業部長って、どんな人?

趣味は散歩、スポーツ観戦と…飲み会
「趣味と言えるほどのものはなく、散歩とスポーツ観戦くらい」という山口事業部長。散歩は休日には5kmほど歩く。スポーツ観戦はサッカーと野球が中心で、サッカーはヨーロッパのリーグをよく見ているらしい。お酒については、実は大好きというわけではないが、みんなとワイワイ・ガヤガヤと過ごす時間が楽しくて好きだそうだ。
1999年4月入社し、第三システム事業部営業部に配属。SmartSESAMEの立ち上げに参画した後、プラットフォームアーキテクトのセールスを担当。2013年2月ソリューションサービス事業部SmartSESAMEソリューション部グループマネジャー、2018年2月SmartSESAMEサービス事業部 SmartSESAMEビジネス部部長を経て、本年2月から現職。(2024年12月掲載時点)